細く長い道 

噛むと美味いんだ     ~come to mind~ - にほんブログ村

大学に通いながら 

この牛丼チェーン店でバイトして

もうすぐ4年

東京に出てきて直ぐに 決めた 

初めて住む東京の街

学校まで 一時間弱かければ自転車で通える

都下とか呼ばれているが 

田舎の田んぼに囲まれ住んでいた実家に比べれば

大都会に思えた

アパートを決め その足で

ここの面接に来た

大学の学費と 家賃 生活費を稼ぐためには

ここと もう一つ 同時に居酒屋のバイトも始めた

僕の大学生活は テレビや雑誌で見る華々しさは

全く無かったけど  田舎では食べる事の出来なかった

居酒屋と牛丼のまかないで

僕は充分幸せだった

今は 夢に向かって 貯めるに貯める

美味しい食べ物や ディスコなど 

華々しい物は 東京には 無数にあったけど

それは 夢を叶えてた時に

それをしたいと思ったらすればいい

今 無理して周りに合わせる必要などない

医大の同級生達は

親や親族に 医者を持つ人が多く

大学に外車に乗って通ってくる人も多くいた

月に数度  メディカルサーチとかって名前の

飲み会 コンパがあったが

最初に断って以来 二度と誘われる事は無かった

僕には その人達と同じように

生きていたら 夢を叶える事は出来ない

小さな 村には病院も無く

母さんが倒れた時には 村長の車で1時間以上かけて

隣村を超え さらに隣の街の病院まで急いだ

でも 

間に合わなかった

だから 僕は 身の丈に合っていないのは百も承知で

医者になって 故郷のあの村に 病院を開業する

その為に ここにいるのだから

周りが どれほど楽しそうだろうが

それが都会の生き方だろうが

僕には関係ない

1日で稼ぐお金は小銭でも ひたすらバイトをして

学費と生活費 あと田舎に残した

婆ちゃんへの仕送り

卒業しインターンを終えたら 村に開業するための

資金を絶対に貯める

4年生になると 病院内での 講義も増えた

同級生の中に その大学の医院長の息子もいて

周りの噂では 彼は 大学の入試すら 

顔パスで受けずに入ったと噂されていた

彼にコバンザメのようにくっ付いている

この大学の 内科医の息子から聞いた話では

彼は 中学生の時から 親のクレジットカードを渡されていたから

好きな女の子には なんでも買い与え

彼女をとっかえひっかえしていたようだ

そのコバンザメ曰く

中学から 今までで 彼女にした女は

1000人近くいるらしく

高校の時から 彼女を海外に連れて行っては豪遊していたらしい

ちなみに 

その彼は この教室の中で 一番いい成績で卒業する予定

しかも 卒業後は 直ぐに この大学病院の助教授に決まっているとか

講義も真面目に聞かないコバンザメは

彼が遠くに離れると直ぐにこの話題を

周りの生徒に言い振り回していた

余程 羨ましかったのか

でも

僕には そんな話どうでもいい

彼も そのコバンザメも 周りの学生たちも

一番最初に 教室に入った時から

医者の息子でも無い しかも 存在すら知らない辺鄙な村から

来た貧乏な学生への 

ざわざわ感 侮蔑な囁き  蔑んだ目

それが東京の洗礼なのか

別に僕には どうでも良かった

生きる為 村の人を助ける為 

それだけの為に 生きている 

だから どれだけ笑われようが

馬鹿にされようが  未来は みんなに平等にある

だから どんなに嗾けられても相手にしなかった

卒業し なんとか 自力で村に開業をして 数年が経った頃

村の 茅葺屋根の家が 国の重要文化財になるかもしれないと言う

ニュースが 流れ

それから 挙って 都会の人々が

村を訪れるようになった

村に宿泊施設も立ち並び 

観光名所として 流行り出した年の冬

僕は この村より更に奥地の 

高塔山で数年ぶりに彼に出会った

高塔山は 夏は登山客も年に数名 

冬は 最近では バックカントリーだかなんかで

たまに 数名が訪れる程度の 

管理も行き届いていない 寂しい山だった

僕は この山の中腹にある 

寺の修行僧が 滝修行の為に訪れる

滝を年に数回 訪れていた

そこに 咲く この滝にしか咲かない 

冬のウツギ  

通称 氷の微笑 と呼ばれている花を観に

母がこの世で一番 大好きだった花だ

そんな所で 

偶然 彼を見かけた

彼は 一緒に遊びに来たバックカントリーの仲間たちと逸れ

誰も居ない この深い雪景色を彷徨い

ホワイトアウトの最中に 熊に襲われた

背中を大きな爪で 内臓に差し掛かるほど抉られ

慌てた熊の巨体に 倒れた体を踏みつぶされ 起きる事も

動くことも 声を出すことも出来ず 

ただ 仰向けに倒れていた

顔を覗き込んだ 僕に  体中の力と声を振り絞り

こう言った 

「 助けて 」

彼を数年前に 雑誌で読んだことがある

その記事では この先 フォーラムの世界の100人の表紙を

彼が飾る可能性が十分にあると書かれていたが

その数か月前に 論文のゴーストライターだったと訴えた裁判で 

敗訴になった コバンザメが週刊誌にリークした情報から

彼は学生の頃から何も変わっておらず

仮に 世界の100人に選ばれたとしても

なんの価値も無く 僕には なんの意味も無い

僕がやっている事になんら影響を与える事は無いと

思っていた

だから

僕は 彼に何も言わず

そのまま そっと 山を降りた

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