日曜日の八百屋の開店は9時
市場に買い付けに行って帰って来る社長が
家族と共に品出しを終えて 朝ごはんを一緒に食べられるギリギリの時間らしい。
夜中に起きて市場に行き、それを運んで店に並べ、閉店の夜8時まで
昼食の時間以外は ほぼ休まずに働く。
平日のバイトの居ない昼食時は当然 一人ずつバラバラに食べる。
だから 朝ごはんと夕飯だけは 必ず一緒に食べるのが 社長の家の代々からの決まりらしい。
代々続いているから 大きな家に 大きな店構えだから
さぞかし儲かってると思ってる人も多いのがこのご時世
でも 一玉 60円で買ってきた 玉ねぎを70円で売ってる八百屋が
それほど儲かるはずもない。
そんな日曜日
携帯のタイマーを一時間待ちがえて 無駄に一時間目に起きてしまった僕は
家で一時間 ボーっとしてることに耐え切れず
いつもよりもずいぶん早く店に着いた
裏の通路の勝手口は すでに品出しが終わってるからか
鍵はかかっておらず
そのまま 通路を通る
タイムカードのある住居の一つ目の玄関扉を開けると
すぐに奥さんの
「誰が来たの~ ? 凪? 聡? リー? 今 朝ごはん食べてるから
こっちおいで~ 一緒に朝ごはん食べよう」
って声が聞こえた。
そっか
まだ 定時じゃないからタイムカード押しちゃダメだよな。
「聡です。 おはようございます」
そう言ったあたりで
二つ目の玄関扉が開き
社長が顔を出した
「家に上がんな。 今日は市場で買ってきた漁りの味噌汁と アジの開きだ。今母ちゃんが焼いてるから上がって椅子に座って茶でも飲んで待ってろ」
そう言うと 引き戸を全開放したまま社長は居間に行った。
靴を玄関框に揃えて並べた僕は 社長の後に続いて
居間に挨拶をしながら 入った。
「聡 おはよう 。 そこに座って」
若旦那が指さしてくれた椅子を 若奥さんが 引いてくれた。
「聡 嫌いな物は無いよね。あっても食べさせるけど」
なんて 笑いながら 焼き魚と味噌汁とご飯を載せたお盆を持って
奥さんが 入って来た。
「ご飯 まだまだいっぱい炊いてあるから 好きにおかわりしなさい」
そう言いながら奥さんは 茶碗にお茶を次いでくれた。
出しがきいた味噌汁と 上手い焼き加減のアジ
ホントにご飯が止まらず
いただきますの挨拶から 一言もしゃべる事無く
夢中でかっ喰らっていた
そんな 中
テレビで流れてるニュースの音に紛れ込んで
奥さんが 社長にこう言った
「あんた また 店の金使って 競馬やったんじゃないでしょうね。今月も10万円ぐらい計算合わなかったわよ。 計算が面倒になるから 、カゴのお金は使わないでって言ってるじゃない。もう」
「何言ってんだ。やってないぞ。 あっ ハイ百万円のお釣りって 言ってホントに百万渡しちまったかっ 。 」
なんて ゲラゲラ笑う社長 。
「まったく 。 笑ってる場合じゃないっての。 毎月10万以上合わないんだから。」
そんな 小声で話してる会話を聞いてから
数週間後
学校に行くために 7時に起きた僕は
歯を磨きながら 付いていたテレビのニュースをぼんやりと見ていた。
「速報です、 ニュース速報です。 昨晩 ○○市の八百屋 十八に 強盗が入り。 住居で寝ていたその店の妻と娘が刺され先ほど病院で死亡が確認。侵入した犯人グループが窃盗を働いているときに、偶然対峙した店の店主とその息子が 刃物で切られ重傷 病院に運ばれました。鑑識の捜査から 犯人グループは
何か重い物を持ち運んだ形跡があると判断し、それも踏まえ近所の防犯カメラなどで犯人グループの逃走経路を捜査している最中だと、管轄の警察署所長。後ほど公開捜査に踏み切る可能性も示唆しているので詳しい事は この後報道に発表されると言う事です。組織犯罪に詳しい 山崎さん これは 。。」
続く
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