毎朝 駅に向かう 遊歩道
アパートと駅の ちょうど 中間あたり
毎日 黒い杖を持ったおじいちゃんが
大きな声で歌を 歌っている
聞いたことも無いメロディーに
聞いたことも無い 英語で
時間に少しルーズな 自分は
家を出る時刻は 都度違う
それでも そこを通るたび
同じフレーズの 同じ一小節
土日は休みで 寝て曜日の自分
たまの誘いに乗って 駅に向かう朝にも
そのおじいちゃんは 口ずさんでいる
何気ない日常の
毎日の事柄の一つになっているおじいちゃん
日々の出来事なので 気にすることも
思い出すことも無く過ごす毎日
そんな毎日の とある 深夜
突然 携帯が いつもより早いビートで
いつもより 大きな音で鳴った気がして
急いで 電話に出た
電話口の主の 声は全く聞こえず
無言なのか 電話が遠いのかわからない
ただ 電話口から 微かな音量で
どこかで 聞いたメロディーが流れている
数秒 待ったが 声は聞こえなかったので
携帯を閉じた
翌朝 再び 携帯が鳴る
田舎にいる 母からの電話だった
元気そうな母に その 電話口で聞いたメロディーを
鼻歌で問いて やっとその歌が
ジョンレノンの イマジンだとわかった
あのおじいちゃん 結構なお年なのに
ハイカラだな なんて 思いながら
イマジンをネットで探し
イヤフォンで聞きながら玄関を出た
いつもなら 既に姿も見え
歌声も聞こえてくるであろう場所まで来たが
おじいちゃんの姿は 見えない
いつも おじいちゃんが歌っている場所に立つと
今まで 全く気が付きもしなかったが
脇に咲く 草の中に
小さな お地蔵さんが一つ
その横に 黒い杖が置かれていた
耳からなのか どこからか 微かに聞こえる
Living for today
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