面接なのか面談なのか
顔合わせみたいな事で採用
そんなことだから
バイトの高校生2人も 黙って来なくなっちゃうんじゃ無いのか
でも
とりあえず
八百屋を出る時に
明日からよろしくお願いします
と一声かけて 黒ずんだバナナとお茶を持って
家に帰った
甘くてめっちゃおいしいって
弟と妹が喜んでたから
社長の目利きは本物みたいだ
父親と母親に 明日からバイトに行くことを告げた
「聡もついに お金を稼ぐ苦労がわかるか。 大変だぞ、働くのは」
父親に口を揃えて
「じゃあ 聡の最初のバイト代で何食べるか考えておかなくちゃ」
なんて 母親はふざけたこと言うし
夕飯を食べてから 風呂の中で
Whiteberryの ”夏祭り„を 大熱唱してやった
翌日 学校帰りに そのまま 八百屋へ
お店に近づくと 直ぐに社長のだみ声が 聞こえ
今日も 活況にお客さんが入っていた
お店の入り口で 3代目と若奥さんに軽く会釈
沢山いるいる お客さんをかき分け
なんとか 裏の段ボール置き場に たどり着いた
前掛けを 物入れから出し
腰に巻き ドカジャンを羽織って お店に出ようと 裏口から
店内を覗いてみたけど あの 高3の凪君が見当たらない
社長からは 来たら とりあえず俺たちは忙しいから
やる仕事は 凪に聞けって 言われていたけど
その 凪君がいないんじゃ 何をすればいいかどうか
わからないじゃん
あっ タイムカード
裏の段ボール置き場の 横の
店と 住居を繋ぐ 扉を開けると
玄関にタイムカードが置いてある
固く引きづらい 扉を 力を込めて開けようとすると
中から 一気に扉が開いた
開いた扉から
「おつかれさま 今日から ?」
凪君と 見たことの無い 外人風の 男の人が立っていた
「はい 今日から お世話になる 田中聡です。 よろしくお願いします。」
「話は社長から 聞いてるから、とりあえずタイムカード押して、キャベツを出すのを手伝って。
あっ この方 リーさん。 リーさんも 今日からだから。 2人で 車庫に止まってる白のキャラバンから、入ってるキャベツ全部お店に持ってきて。台車はハイエースの隣に並んでる平台車に積んで載せて来てくれればそのまま並べられるから。」
「そうだ。 タイムカードを押したら、ちょっと固くなってるけど、この扉は必ず閉めてな。あと、ここから先は社長達の住居だから絶対に勝手に入らない事。 あと そっちのシャッターも絶対に開けちゃダメ。社長の私物が入ってるから」
そう言うと、凪君は扉の右手にあるシャッターを指さしながら、店内に入って行った。
身長は自分より少し小さく、見た目160cmぐらいの小柄で華奢、年齢は二十歳を少し超えてるように見える男性は、こちらを見て少しほくそ笑んだ。
「田中聡です。今日からここでバイトすることになったんですけど、自分より先に面接に来てたの、リーさんだったんですね。社長、全然仕事内容も説明してくれないから、大変なのかもわからないけど、とりあえず、キャベツ出しに行きましょうか。リーさんはどこの国の人ですか?」
話ながらタイムカードを押し、固く重い扉を閉めた。
「ベトナムジンです。去年、日本に来ました。ヨロシクオネガイです」
「24歳デス」
顔の見た目より、日本語が上手かった。
「日本語はどこで覚えたんですか?」
右手のシャッターの中に入ってる社長の私物の中身は気になったけど、話しながらその場から、一旦店の中を横切り、車庫に向かった。
「ベトナムでお店やってるオクサンから教えてモラッタ」
「旅行にキタヒトにフォーをウッテマス」
「結婚してるんですか~ じゃあ お金を稼ぐために日本に?」
鍵のしまっていない、キャラバンの後ろの扉を開けると、キャベツの入った段ボールが山のように積まれていた。
「ハイ。 サンをいい学校にイカセル為にお金ヒツヨウ。だから、友達に頼んで、日本にキマシタ」
「サン、 子供? 子供いるんですか? じゃあ尚更日本来るの辛かったんじゃないですか?寂しいでしょう」
台車を下に二台置き、段ボールを落とさないように綺麗に積む。それを見て、リーさんも同じようにやってくれた。
「デモ、直ぐに帰ります。チャンさんにイワレタ。3マウス。3マウスしか日本にはいられないからって。ナノデ、毎日ハタライテ、ハンの学校にイクお金タメマス。ソレデ帰ったらユーチンが3マウスこっちに来ます」
段ボール、何段重ねたらいいんだろ?
リーさんが話してた事、あんま理解出来なかったけど、とりあえずもう8段ぐらい重ねたから、
「店に押していきましょう。」
台車を倒さないように、道路に出て店の前へ運んだ。
続く
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