雀のお宿 

噛むと美味いんだ     ~come to mind~ - にほんブログ村

都心のど真ん中の古い中古マンションに住む夫婦のお話

夫婦は齢50代半ば  一人息子は成人し地方に就職

旦那さんは 生真面目で会社でも評判のとても優しく誠実な初老の男性

奥さんは 近所でも悪いうわさが絶えず

何かあると 直ぐに辺り構わず 怒鳴り散らし

毎晩 毎晩 大きな声で 旦那さんを叱っている

ある晩 旦那さんが帰宅の徒に付く時 

駅のビルの 脇路地に 若い女性が倒れているのが目に入った

すぐさま旦那さんは 近づき声を掛ける

女性は年は二十歳前後 とても綺麗なブロンズの髪の毛に

顔立ちは日本の女優を 優に抜き去るほどの美貌

モデルと変わらぬ細身の体に グラビアアイドル並みのスタイル

女性は旦那さんの声に 気が付き 

突然体が動かなくなったと 告げ また意識を失う

旦那さんは 通りまで彼女をおぶり タクシーを拾って自宅に連れて行った

自宅の玄関を開けると  遠くから 奥さんの声が

『遅かったじゃないの 残業代なんてつかないんだから 

ちゃっちゃと帰って来て 家の事やんなって 言ってるじゃない』

言いながら 玄関を覗いた 奥さんは 椅子から転がり落ちながら

大きな声で

『誰なんだい あんた』

事の顛末を 告げると 直ぐに警察に連絡しようとする奥さん

とりあえず 彼女が声を出せるようになってから

連絡した方が良いと 旦那さんが止める

それよりも 救急車の方が良いのか と

独り言のように話していると 綺麗な若い女性は目を開き

辺りを見回す

連れさって来たわけではないと 慌てて告げる旦那さんに

女性は軽くお礼を 良い

歩いていたら 突然体が 動かなくなったと

その時 天から一筋の光が落ちて来て 急に立っていられなくなったと

だから 病気とかの類では無いので 少し 少しだけ休ませてくれれば

直ぐに歩けるようになるからと

2人に懇願した

そのあまりの 美貌さに 嫉妬と 旦那さんへの怒りがこみあげてきている

奥さんをしり目に 優しくその話を聞く旦那さん

『では 少し休んでいきなさい 何か飲みますか?』

と冷蔵庫を開け 麦茶をコップに注いで渡す旦那さん

少しの間 横になりたいと言った女性を 

自分のベッドに案内した旦那さんが 居間に戻ってくるなり

血相を変えて 怒鳴り散らす奥さん

詰めより 怒鳴り 気を紛らす

 

長い間 怒りを一身に受け止めた旦那さん

急いで 夕ご飯を作るからと告げ 

3人分のご飯を作る

さらに激怒する奥さん 

『うちには あんな 得体もわからない女に食わすよほど 余裕は無いんだよ

あんた なんか下心でも あんじゃないのかい』

ただの人助けだと 困ってる人が居たら優しくしろと親に教わっただけだからと

なだめる旦那さん 

料理の途中で シャワーを浴びるかと 聞きに女性の元へ

旦那さんは料理を

女性は遠慮しながらもシャワーへ

もう イライラは限界の奥さん

会社からの電話が鳴った 旦那さんは 

奥さんのイライラを察知してかベランダへ

イライラのピークに達した奥さんは 

洗面所へ行き  彼女の着ていた服をビリビリ破り 

裸のままの彼女を 玄関から追い出した

ビショビショのまま 裸で放り出された彼女は

何度も玄関を叩くが ドアチェーンまで閉め 

リビングでテレビの音量を上げる奥さん

部屋に戻ると さっきよりも 音量の上がったテレビは

気になるが 何も変わった様子はわからない

出来上がった食事を 机に並べ

洗面所の外で声を掛ける 旦那さん

何度呼んでも 返事が無い 

扉を開ける訳に行かない 旦那さんは 

奥さんに中を見て来てくれと頼むが 奥さんは

『彼女のは帰ったよ  だから もういない』と

慌てて洗面所のドアを開けると 中には ビリビリに切り裂かれた彼女の衣服が

何があったのか 問いただす旦那さん

怒りの頂点に達した奥さんのした行動を聞き

自分の愚かさに気が付く 説明も奥さんへの優しさも配慮も足りなかったと

反省し それでも 裸で追い出されたら大変だと

自分のTシャツと短パンを持ち 

外に飛び出し 彼女を探した

近所の公園に 小さな公衆トイレがある

そこに隠れているのかも と トイレの外から

声を掛ける

返事は無い 

ただ そのトイレの小屋の奥に 昨日までは無かった

大きな 大きな お屋敷がぼんやりと見えた

恐る恐る近づくと  大きな門扉が開き 

家の玄関のまえで 先ほどの彼女が とても素敵なドレス姿で立っていた

手招きに誘導されるように 中に入り

ぼんやりとした空間の中 彼女からお礼の言葉を告げられ

左の小さなカバンか 右の大きなアタッシュケース

どちらかをお礼の品に あなたに差し上げますと言われ

旦那さんは小さなカバンを 手に取り 何度も頭を下げて

その場を去り 家に走った

彼女は不思議の国の子なのか それともどこか大金持ちの子なのか

そんな話を 奥さんにしながら 小さなカバンを奥さんに渡す

奥さんは 急いでチャックを開くと

中には帯の付いた 1万円札が 一束

100万円   

これで 旅行に行ける と にやける奥さん

でも 待てよ

『なんで あんたは 大きなアタッシュケースを持ってこなかったんだい

こっちのカバンで 100万なら そっちなら 億かもしれないじゃないか

もう一度 そこに行くよ 案内しなっ 』

 

シブシブの旦那さんを尻目に 

その大きな お屋敷の前に着くと 

『さっき助けた者です  さっきのは旦那の分 私にもお礼をくださいな』

と 大きな声で 喚き散らす

開いた扉の 奥の 綺麗なドレス姿の女性には見向きもせずに

奥さんは 大きなアタッシュケースを抱えて 一目散に外に飛び出した

家に着くまで 開けてはダメの 言い伝も守らず

公園のトイレに入り 勢いよくカバンを開ける

すると 中から  モクモクと白い煙が

煙を浴びた奥さんは 瞬く間に年を重ね

旦那さんが 助けに来た時には 40年分 年を重ねてしまっていて

手は皺くちゃ 顔もシミだらけ の90代になっていた

旦那さんは  その皺くちゃの手を優しく手に取り 

体を起こし 自分の着ていたセーターを肩から被せ

背中におぶりながら 

家に帰っていきました

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