僕はバッシュに生まれ変わった
生前犯した罪の罰として
牢獄で電気ショックを受けて 天命を無くし
若い大学生のご主人様のバッシュになった
バスケットシューズって
バスケする為だけでなく お洒落靴の代表みたいに
カジュアルに履かれるから
需要は沢山
学校に行くときも バイトに行くときも
ご主人様といつも一緒
たまに家で 宅急便を受け取る時に
頭から踏んづけられるけど
綺麗に２足揃えて並べらると気持ちいい
ご主人様が初めてのデートの時の海岸も
一緒だった
３人で砂浜を走り
少し水が跳ねたりするだけで キャッキャッ キャッキャッか
前世では経験出来なかった アオハルを経験できた
２人が抜け駆けで 海に足を入れに行くときは
置いて行かれたけど
少し冷たくなった ご主人様の足でひんやりと出来た
たまに 汚い物を身体中で受け止めるけど
ご主人様の足を守れたんだって
思えば 何ともない
歩道の路肩に 背中をゴリゴリやって
落としてくれるご主人様は 良い人だ
ご主人様がその彼女さんと別れた頃
僕はシューズクロークの一番上に入れられた
ハイカットの流行から
ローカットのスニーカーに時代は流れ
ご主人様も新しいニューバランスを手に入れた
それでも 時代は回るし
飽きも来る
順番を首を長くして待っていたけど
ご主人様の引っ越しと一緒に
僕は不用品の袋に入れられ
ゴミ置き場に
カラスが袋を破り 風にさらされ
片方飛ばされた
体が分断されたまま
不法投棄扱いの袋は回収されず
大量の缶を自転車に載せたオジサンが
ゴミ置き場から僕を手に取った
袋を漁り もう一方を探すオジサン
でも ここにはもういない
オジサン 一緒に相方を探してくれませんか？
ゴミ庫の裏の雑木林に オジサンは 僕を投げ込んだ
それから もう２０年近く
根っこを枕に 僕は眠っている
合成繊維の僕は この命を全うし
新たな転生を得るのに 1000年はかかる
見上げた夏の雲が アオハルを思い出させる
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