万華鏡の真実

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東京に上京して8年

高校卒業と共に 東京の小さな工場に就職した

工場は 2人の日本人と 就業研修で来た5人の外人だった

2人の日本人と言っても 一人は社長で 一人は自分

知合いも 同郷の人も居ない 東京で

会話をするのは 片言のベトナム語

社長は 研修生と家族のように接していたので

一緒に食べる 昼食は フォーが多かった

ある日  工場に小さなボヤ騒ぎが起きた

工場では無く 休憩室 兼 更衣室の 

ストーブが 倒れ 火が出たが

直ぐに社長が 気が付き

消防に連絡 大きな被害は出ずに 事なきを得た

数日後  消防の担当の方と一緒に 

警察が来た

ぼやの原因は ストーブが倒れた事だったが

消防の検査から ストーブが倒れた時には すでに 

部屋中に 灯油が巻かれていたことが わかったらしい

放火の疑いも 考えられるから

従業員に話を聞きたいと言う事で

警察と共に来たと言う

それぞれ 社長室の来客用のソファーに座らされ

警察から 色々聞かれた

僕は5分とかからなかったが

研修で来ている 彼らは 根掘り葉掘り聞かれたらしい

数日後

2人の研修生が 居なくなった

連絡も無く 携帯にも出なくなったが

何回も経験しているから 社長も特に慌てた様子も無く

警察に連絡した

それから2日後   の夕方

警察から 連絡があり  

ここから車で1時間以上かかる

山梨の山中で  居なくなった 研修生の2人の遺体が見つかった

2人とも 薬を飲んでの自殺だったと警察に言われた

日本での 身元引受人になっている社長に

死体確認と引き取りをしに 山梨まで来て欲しいとの連絡だった

会社の ボロボロのマニュアルの軽自動車で

研修生を手配してくれている会社の担当や 葬儀屋に電話をしている

社長を助手席に乗せ 中央道を走らせた

都留警察署に着いたのは 夜の9時

死体の確認をして 書類にサインをし

警察署を出た時には すでに 11時を回っていた

今夜は ビジネスホテルに泊まって 明日の早朝に 自殺の現場の確認をして

それから 会社に戻る事になった

コンビニで 弁当と1本ずつビールを買い

ビジネスホテルで少し 休んだ

ボヤの件から 短時間で色々あったから

社長も僕も 今回は少し疲れていた

警察から もらった明日 朝に寄る 場所の地図を確認して

今夜は寝る事にした

翌朝 

自殺現場で 警察に何気なく言われた一言が気になった

この場所で 仰向けになって 倒れていた

検死の結果 自殺だったことから

調べる事には至らなかったが 

死体の周りに 少量の灯油の香りがしたと

会社に戻ってからも 社長は 電話に齷齪していた

今月のノルマ分は 作り終わっていたから

作業的には 工場を休んでも 問題なかったが

他国の研修生の遺体を どう扱ったらいいのかなど

国際的な問題もあり  落ち着いて考える為にも

工場は僕を含めた 4人で賄った

      

日本で葬儀を済ませ 位牌だけを祖国に送ると言うことで

祖国の親族との話がついたと 研修生の手配をしている会社の担当から言われた数日後の

2人の葬儀が終わった 夕方

会社に一本の電話が入った

葬儀の片づけに追われていた 社長の代わりに

僕が電話に出たが  名前を名乗る前に話始められてしまったので

僕を社長と勘違いしたのか

「書類は お送りしてありますので 

 中に入ってる 見本の通りに記入して  送り返して下さい

 入金の口座に変更が無ければ それで手続き完了となりますので

 今後ともよろしくお願いいたします。」


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