ゆく年くる年

遠い空を ぼんやりと眺める 

なんだか そっちは 暖かそうだ

太陽が照らしている 光の線が  

遠い地元を振りかざしているように見えた

ここに移り住んで もう20年

近所の顔見知りは居ても

本気で 言い合いを出来る人は誰も居ない

話をするとすれば  銭湯の横に置いてある  

ワンカップの自動販売機と 吸い殻入れの前でだけ

今日の勝ち馬は イマイチだったとか

給付金はこうすれば 貰えるらしいとか

快適でオシャレ。マタニティ服・授乳服Pearls

部屋に帰って 明かりをつけると

いつもの 何も音の無い世界

誰の呼吸の音もしない

虫でさえも息を殺しているかのように

そんな矢先に  雇い先の 社長から

事業縮小の話しを聞き 自主退社を促された

退職金は  給付金にも及ばなかった

これが 今の世の中だと 

知らしめるために  新宿のビルの屋上に立ち

強風を受けながら  また 部屋に戻る

こんな生活をしてきた20年

あの 暖かそうな光の元に 

戻る事は もう出来ない


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