ルールはルール

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どこか遠くで  

車の急ブレーキをかけた音が聞こえた気がする

不安を感じ 窓から 音の聞こえた方向を眺める

マンションの2階 家から見える

景色は暗く 人の行き交う姿すら見えない

壁に映し出された時刻は

23時からさよならを告げる直前

ベッドに戻り 布団に潜る

18階建ての新築マンション

まだ越して来てから数日しかたっておらず

引っ越しラッシュの中 引っ越し屋さん以外の

どこの住人にもあっていない

都会とはこう言う物だと

SNSにも載ってるし 挨拶用のタオルも用意していない

眠りがレムに近づいた頃

上階の喧騒が聞こえてた

ドアを頻繁に開け閉めする音

階段を上下に走り回る音

うっすらと目を 開けたタイミングで

いきなりのインターホン

通話のボタンを押す間も無いまま

インターホンを介せずに聞こえてくる

中に人が居るかの問いかけと

今すぐ外に出ろの叫び声

止まっていたCPUファンが 徐々に回り始めた頃

先ほどの叫び声の映像が脳裏に浮かび

何も持たず 玄関まで走り

ぶら下がっていた鍵を片手に 扉を開ける

通路には誰もおらず 階段をドンドンと下る音

鍵だけ閉めて 急いで階段を駆け下りる

階段の小窓から見えた 駐車場に

たくさんの寝巻姿の人が集まってるのが見えた

急いでその場に 向かい

一番手前の 人に話しかけた

「何があったんですか? 火事ですか?」

初老の男性は そこそこ大きな声で

「スタート 」

と叫んだ

それと同時に その場にいた みんなが一堂に会し

周りを取り囲むように円になり

中心にいる自分に向かって 

みんなで歌を歌い出した 

happy birthday to you ♪

マンションの住人全員が

歌いながら 踊り出す

戸惑っている最中

小さな女の子が歩み寄り

A4サイズの封筒を渡された

中には マンションの管理組合のルールブック

ペライチで書かれた住人全員の誕生日の表

歌が終わったと同時に 誰一人会話も会釈もせずに

部屋に戻っていった

真夜中の駐車場に取り残された自分

夢と現実が交錯する中

部屋に戻り 布団に入る

翌朝 夢見の悪い寝起きのまま

トレイに向かう

いつもの光景と何かが違う

いつもの定位置さながら

机の上に置いてある 

一冊の ルールブック

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