正義が先か 悪意が先か
人々は 正義は平等に行われるから正義だと思っている
悪事は 悪い奴が行うものだと
真夜中の恵比寿駅周辺
タクシーが延々と路駐する中
交差点をまたぐように止まっているタクシー
若者と口論になっている
数分前
その交差点に 若い女性が歩道と車道を跨ぐように
大の字に泥酔していた
交差点の反対側の道路では
飲み会帰りなのか 新入社員ぐらいの年齢の若者が3人
流行りの歌を 割れんばかりの大声で歌いながら 信号待ち
交差点の2mほど 手前に止まっていたタクシーの運転手は
視線越しに見える 女性が 微動だにせず 泥酔しているには気がついていた
一度降りて 女性の前に立ち 軽く声がけ
面倒くさい事に巻き込まれる事に 躊躇したか
直ぐに車に戻るも
運転席側のドアに 寄りかかりタバコに 火を付ける
タバコを吸い終わってもまだ 微動だにしない女性
もう一度 声を掛けに 女性の前にしゃがみ
顔を覗き込む
ミニスカートから露になっている 足側にもしゃがみ込み
声を掛ける
「 大丈夫? 」
それでも 女性に反応は無く
寝転んでいる女性の脇に 無造作に置かれたバックに手をやる
携帯電話を見つけたが 認証が出来ず開かない
すぐそばの交番に 駆け寄る事も 容易だったが
バックの中にあると思っていた 財布が無い事を確認した後
再び タクシーに戻り 交差点にタクシーを止めた
丁度 反対側で大声を出して 歌っている若者3人が信号待ちをしている最中
左後ろのドアを開け 鞄を 車内に置き
年の頃から 23歳前後 モデル事務所の多い 恵比寿らしく
グラビアアイドル並みにスタイル抜群
ハーフ顔の女性の 脇に手を入れ 抱きかかえようとした時
「大丈夫ですか~?」
3人の新入社員が 信号を渡って 運転手と女性を見て 言った
そう言った1人の若者の 横の若者が
「この子 スンゲー綺麗じゃないっ」 と唾をまき散らしながら
その横の それほど足元ぐらついていない若者は
でもさ 泥酔してるのにタクシー 呼んだの?
誰が? 周りで誰か 見てんじゃね?
もしかして モニタリングだったりして
話に聞く耳を持たずに 女性を抱きかかえようとするタクシー運転手
話を聞いてもらえずに スイッチが入ったのか
最初に声を掛けた 若者が 運転手の肩を止めた
その右手を左手で払いのけ 立ち上がった運転手に
「おじさん さらおうとしてるんじゃないよね?」
それから 数分間大きめの声を張り上げている間も
微動だにしない女性
騒動を見ていたのか 向かい側に停めていたタクシー運転手が
交番に声を掛け 数分後には 3者は 別々の場所でお巡りさんと話をしていた
今日は女性のお巡りさんは非番なのか
少し年配のお巡りさんが 寝ている女性のカバンの中身を調べ
怪我の有無を確認する為か 体を触り問診
膝から軽い出血を確認
もう一人の お巡りさんの手伝いを受け 背中に背負い交番へ
若者と運転手は 収まったのか そのまま 塵尻となった
その出来事の 一時間前
交差点の数十メートル先にある barから
明らかにオーラの違う サングラスにシルバーの髪の毛の男性 一人と
3人の女性が 狭い歩道を 隣を奪い合うように
交差点に向かって 歩いて来ていた
配車したタクシーは タイミングよく現れ
乗り込もうと まず 男性の隣を歩いていた女性が
フラフラながらも小走りに 後ろの奥の席に
次に男性が座り その隣に 座ろうとした泥酔少女が
おぼつかない足元に注意を払って 段差を降り 登ろうとした時
僅かに後ろにいた 女性が軽く 肩に手を掛けた
力が後ろ向きに掛かり 足は前方に向いている状態に耐えきれず
段差で足を挫き タクシーの側面にどこかをぶつけ
歩道に倒れた
運転手さんが 「大丈夫ですか?」
と降りようとしたのを見て 男性は
騒ぎになると 困るから 出して
数秒の間は あった物の タクシードライバーの目でも認識できる顔だったのだろう
置き去りに したまま その場から すーっと走り去った
諦めきれない気持ちからか 寝転びながら半身を車道に乗り出し
タクシーの去った方向を 眺める女性
その全てを 向かいのビルの3階から
ずっと 見ていた 私
正義とは 何なのだろうか?
平等とは

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