眠らない街で眠る僕

眠らない街で眠る僕

噛むと美味いんだ     ~come to mind~ - にほんブログ村

午前を半分ぐらい過ぎた頃 歯を磨き 髪の毛を整えて

自転車を漕いで 10分

バイト先のピザ屋に着くと

キャップを被り エプロンを撒いて

注文の電話を 皆と待つ

注文が入ると 一斉に

動き出し 生地を伸ばすもの

トッピングを載せるもの

配達先のマップをみるもの

届けたピザは 

和気あいあいとしたオフィスで

若い会社員たちが 挙って食べる

夜になると注文も増え

町はネオンの灯りと 香水の匂いで充満する

原付を飛ばしながら見る月夜は

黒いお皿に盛りつけたられた 

目玉焼きの黄身のように黄色い

ピザ屋のバイトが終わると 

近所の夜だけ営業している 酒屋に向かい

夜のお店の酒の補充に回る

華々しい夜のお店は

色んな匂いが充満していて

ときたま 鼻がひん曲がりそうになるが

目の保養にはなる

夜の店のシャッターが降りるころ

立ち食い蕎麦屋の 開き戸を開け

通勤者や酔っ払いの為に

蕎麦を茹でる

もう 5年ぐらい 1日も寝ていない

まるで 眠くならないのだ

寝ていないどころか

何も口にしていない

全て管理された製品だから

味見をする事も無いし

好んで何かを食することもしないまま

5年が経った

体に不自由なところも無く

特段痩せたわけでも無い

ただ 眠らず食べず 何も飲まない

ただ それだけ

欲望を切望することも無く

自我を痛めつけている訳でもない

眠らず食べず

生きているだけ

1人で生きていると

不意に寝てしまったり

何かを口にして 起きる不意な出来事に

対処できるか心配になるから

何かを踏み出すことに躊躇する

例え それが 以前は普通だったことでも

人間なんて そんな もんだ

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