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もうすぐ なりたくもない 小学生になる僕は

家のマンションの近くの公園で 

蟻を一匹捕まえた

その蟻は ちょっと 他の蟻と離れていて 

前の蟻を 追っかけず 自分勝手に行動しているようにみえた

だから 僕は その蟻を 落ちていたビニール袋に入れ

中に 拾った 缶スプレーを吹きかけた

蟻は 袋の中で 慌てふためき

袋をひっくり返すと 

元気よく グルグル回る 銀色の蟻がそこにいた

それでも 何週もすると

蟻は 平衡感覚を思い出したかのように

真っすぐ巣の方向を目指し 歩き始めたから

僕は 再びそいつ捕まえ

マンションの七階から 放り投げた

さすがに 七階から 1階に落ちた

蟻を見つけることはできず

そのまま 

数年の月日がたった

小学校の高学年になって 初めての遠足

高尾山に登った

山道は それほど険しくも無く

小学生でも歩けるぐらい 整地されていて

程よく山の中腹まで登った

休憩場所で 持って行った レジャーシートに座って

ふと 辺りを見回す

頂上に続く 整地された道の横に

一本  細い  葉が茎ごと倒されて出来た獣道が見えた

僕は 一人で その獣道を進み

あたりから全く人の気配を感じないところの 

一本の大きな木の前で 止まった

違和感を感じた僕が 引き返そうとすると

どこからともなく ぼんやりした 声が聞こえた

「あなたが 望んでいることは

ここから 仲間のいるところに戻る事ですか

それとも ここで このまま 先を求めて進みますか?」

僕は 声のする方向を 目を凝らしながら 

凝視した

すると 小さな 蟻が 一匹 

大きな木の幹に張り付いているのが見えた

その蟻は 銀色だった

僕は 迷子になっていた不安から

「仲間のいるところに戻りたい」 

と言った

すると 小さな声で

「わかった」

と聞こえた

声の方角を 銀色の蟻のいる方角を眺めると

そこに蟻はおらず 

木々のざわめきだけが聞こえた

今の出来事がなんだったのかわからず

僕はそのまま 頂上方向だと思われる方向に歩み

また 一本の大きな 木の手前で足を止めた

すると また

「あなたが 望んでいることは

ここから 仲間のいるところに戻る事ですか

それとも ここで このまま 先を求めて進みますか?」

と聞こえた

だから 僕は 大きな声で

「仲間のいるところに戻りたい」 

と叫んだ

すると 辺りの気配は何も変わらないまま

銀色の蟻すら見えなかった

なんだか 不安に苛まれ

僕は 急ぎ足で 

頂上を目指して歩いた

また 何百歩 歩いた 頃

大きな木の前で

その大きな木の幹に 銀色の蟻がしがみついているのが見えた

僕がその蟻を 掴もうと手を伸ばすと

また

小さなかぼそい声で

「あなたが 望んでいることは

ここから 仲間のいるところに戻る事ですか

それとも ここで このまま 先を求めて進みますか?」

と聞こえた

だから 僕は

泣きながら   このまま先に進むから 

どうか 仲間や先生に合わせてくれと 言った

すると  幹にしがみついていた 銀色の蟻が

そこから ポトリと落ち

その後 

一度も 大きな木も 銀色の蟻を見る事も無く

僕は永遠 頂上を目指して歩いていた


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